あはは。変な積み木。
やる気がむくむくともたげている様子にも見えるし、
怒りとか疑念のようにも見えるし、どことなく色っぽい形にも見える。
どうやって遊ぶのかいまいちわからないところがまたいい感じです。

ドイツといえば、おすすめしてもらっていた
パトリック・ズュースキント『鳩』、読みましたよ。
アパートに紛れ込んできた一羽の鳩のために、人生が崩壊しそうになる
主人公ジョナタンの姿に、爆笑しつつ大いに共感。
たかが鳩一羽のことで動揺する自分に呆れ、
仕事で些細なミスをしては真剣に凹み、
街灯の浮浪者と己の人生とを引き比べては頭を抱えるあたりの
変な生真面目さと滑稽さ、とても他人事とは思えません。
いつもながら良いものを薦めてくれてありがとう。

さて、銀行の警備員であるジョナタンは、自分の仕事を銀行強盗にとっての
「スフィンクスのような存在」と捉えていましたが、
私が勤めるお店の警備員さんたちは、じっと固まって
睨みを利かせていればよい「スフィンクス」タイプではありません。
お客さんに混じって店内を巡回する、いわゆる「私服警備員」なのです。
本物のお客さんと彼らを見分けることができるのは、顔を知っている私たち店員だけ。
(私たちでさえ、新入りの警備員さんに何日も気づかず、
後で挨拶されてびっくりすることがしばしばあります。)
店内の様子に常に気を配りつつ、目立った動きはせず
お客さんに同化していなければならない、かなり神経を使う仕事です。

私服警備員には老若男女、様々なタイプの人がいますが、
特に個性的なのは、私たちが密かに「ボンドガール」と呼んでいる女性。
派手な服装に身を包んだ彼女は、ちょこまかとよく動き回ります。
時々店員のそばにやってきては、大げさに辺りを見回してから
「異常、あ、り、ま、せんっ」
と耳元で囁く。怪しいと思ったお客さんは、決して逃がさず追跡します。
(ボンドガールの万引き検挙率は相当なものらしいと噂に聞いています。)
かと思えば、業務用の携帯電話で親戚に電話していたり、
もう一人の私服警備員を捕まえて、売り場で延々立ち話をしていることも。
立ち振る舞いがどうにも目立ちすぎていて、普通のお客さんには見えません。
かといって警備員にも見えないので、時にはこんなトラブルが。
(以下はボンドガールの弁)
「このあいだ、変なお客さんがいたのよ。
商品を持ったまま階を何度も移動するから、追っかけてたら、
案の定そわそわし始めて、何度もこっちを振り返るわけ。
ますます怪しいと思って、あたし、すぐ隣に立ってずーっと睨んでたの。
そしたらその男、急に駆け出して」
「逃げたんですか」
「それがねえ。レジに駆け込んで、後ろから変な女の人が付いてきます、だって!
失礼しちゃうっ。変な女って、あたしのことだったのよ!」
(2006年3月13日)
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