東海道線内にて、三十代男性(作業員風)と四十代男性(作業員風)との会話。

「そのまんま東、すごいすよね」
「今なんか勉強してるんだっけ」
「政治とか、経済とか学びたいらしいすよ」
「ああ、俺全然わかんないわ、経済とか政治とか」
「俺もダメですねー。ところで山田さん、花見は行きますか」
「花見?いやあんまり行かないなあ」
「楽しいっすよー。桜の下でサッカーやると。
みんな酔っ払ってるから、球がまっすぐ飛ばないんですよ。ふらふらして」
「へえー」
「ただ、出費はすごいですけどね」
「酒代?」
「花見してると、周りにいる人をどんどん誘っちゃうんですよ。
一緒に飲みませんかって。もちろんお金はもらわないんすよ?」
「あー、やっぱそういうの苦手そうだわ。俺人見知りだもん」
「いや、大丈夫すよー。去年は、気づいたら知らない人が50人くらいいて」
「どうやって増やすんだよそんなに」
「家族連れとか誘っちゃうと、一気に5人くらい増えますからね」
「家族連れも誘うの」
「ええ、そこんちの赤ちゃんがもう可愛くて可愛くて、つい」
「ふーん」
「…川崎・品川間って長いすよね」
「座りてえなあ」
「でも、花見の後座って帰ると、やばいんすよ、みんな寝ちゃって」
「乗り過ごしたか」
「一回失敗しちゃったんすよ。爆睡してて、
気がついたらみんな降りちゃってて俺一人で。
しかもここ(額)にマジックで『肉』って書いてあって」
「へえ」
「ここ(頬)にはナルトみたいのが描いてあって」
「せめてキャラクターは統一してほしいよなあ」
「肉って言えば最近の輸入規制はどうすかねえ」
「どうって」
「肉好きとしては、あれはどうかと思うんすよ。肉、外国産のがうまいですもん」
「やっぱりそうかねえ」
「肉好きとしては、豚肉はアメリカですね」
「ほう」
「牛はオーストラリアで」
「うん」
「で、キムチは韓国ですね」
「そうなるだろうねえ」
「山田さんも花見、行きましょうよ」
「まあ、考えとくよ」

(2006年4月17日)
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