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どの人の睫毛も濡れてゐる秋よ
鳥居の街は逆さに映る
自転車の骨冷えてゆく木下闇
「速達っす」とアカゲラは言う
斑雲に古き駅舎はつつまれて
白き帽子の遠ざかりゆく
想像の絶対音感 印画紙に
冷たい指をそっと含めば
ひとしきり退路を想ふ冬の夜に
はるかなりけり小さき足指
神々のあらそひごとはたえずして
湖の底よりひろわれる斧
濡れた手を拭くあいだだけ待っていて
夜の郵便夫夜のたてがみ
さらわれてきた設定で過ごす春
フランスパンを買ってどうする
目覚めればぼくのからだは白鯨で
道なりに行くことはできない
こいびとのこいびとがうつくしいよるに
あわれなほどの猫舌をみた
口の中に巻き起こる風 霜月の
彼方へ飛ばしうる語彙がない
映写機がちらちらうつす文字たちよ
おしなべて彼ら童顔である
冬空のギターを探す男たち
汗ばんだ手がケータイ握る
伝えねば君の眼鏡をかけたいと
ボノボが集う春のひなたで
海に向き人はしずかに乾きおり
あの日見ていた地平線から
夕暮れて神のブログを読み返す
「性」のくだりで誤字を見つけた
天啓のようにであった靴履いて
長子のわたる蔓薔薇の橋
寝不足につよくなりたる三十五
子規庵に来て庭を見ており
妄想の中じゃ泣かした何度でも
スモークまみれのポールダンサー
性欲の兆しておればまだ花野
アンチエイジ科受診しにゆく
ほうじ茶の立ちあがる湯気ほうほうと
地球に帰還果たしてわれは
指先の指紋のなかに銀河あり
猫の姿勢に丸まりて見つ
選手村だった公団住宅で
雨に気づいてゆく明けの窓
星座しか知らぬ男の腕の中
飛ばさせて夜の紙ヒコーキを
真っ黒い飴をくるんだセロファンに
5月の川のひかりっぱなし
屋上にひとすじ残る雨を踏み
雲に想えり雲置く峰を
夏の海ピーヒョロ鳶が下降する
飛ぶより墜ちることはたのしい
堕落論読むべくもなき入梅の
いたるところで米を研ぐ音
七回の攻撃告げるファンファーレ
葉月の空に水晶を刷く
ゆりかごの「ゆ」のあたりからはみだした
概念がそれとなく翡翠だ
仕事場できれいに笑うさきさんの
少し大きなお弁当箱
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