好きだった食べ物が、食べられなくなってしまう例もある。

たとえばまんじゅうとか。
「山崎パンの工場バイトで36時間栗まんじゅうの餡を練り続けてから
栗まんじゅうを見るのも嫌」といった「工場でまんじゅう怖い」系の
話はよく聞く。そういう話を聞くのはとても楽しい。

一番印象に残っているのは小学校の時、学校帰りに友達から聞いた話。
夕食の時に友人が好物のしらすごはんを食べていると、
耳元で5才年上の姉が
「ほおら、○○ちゃん(彼女の名)のお口の中で
たくさんのシラスの脳みそがぐちゃぐちゃになってるよお」

とささやいたのだという。ナイーブな我が友はそれを聞いて
口の中のしらすを吐き出し、以来食べられなくなってしまった。
「口の中でしらすの脳みそぐちゃぐちゃ」のイメージが耐え難いのだ。

これが逆ベクトルの説得、
というか「呪い」の一例です。

しらすの脳みそぐちゃぐちゃの呪い。

おかしいのか怖いのか、なんだかよく分からない。


言葉の力というものは怖い、というか、
シラスの脳みそを思い描く人間の想像力とか、姉妹の悪意とか、
まあ、なんというか、いろいろ怖い。

幸い、その呪いは私には掛からず、シラス好きです。ねぎも。
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